図書館館長の四方山話

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目黒のローカルフリーペーパー『きんりん』

図書館館長の四方山話

木林文庫は、単に本を閲覧するだけの場所ではなく、時には「木林座」として映画会を開いたり、「木林バー」としてお酒を楽しんだり、あるいは「木林食堂」として料理教室を開いたりと、様々な試みを行ってきました。過去には中東料理のタジンやカレーの教室を開催したこともあり、本をきっかけに人が集まる場としての可能性を広げています。

地域を繋ぐフリーペーパー「きんりん」

目黒のフリーペーパー

私たちが大切にしている活動の一つに、フリーペーパー『きんりん』の制作があります。これは、学芸大学の自宅から徒歩で歩ける範囲、およそ半径4キロメートル圏内に住む魅力的な方々にインタビューし、紹介する活動です。

当初は、大好きな漫画『11人いる!』にちなんで11人を紹介したら終えようと考えていましたが、町の魅力に引き込まれるように活動は続き、今では20人を超える方々にお話を伺ってきました。カフェの店主、お花屋さん、レストランのシェフ、さらにはジャーナリストなど、この狭い圏内だけでも驚くほど多様で魅力的な人々が暮らしていることに、改めてこの町の豊かさを感じています。

専門家と語り合う濃密な時間

花すけ

『きんりん』でのご縁から、特別な講座が開かれることもあります。以前、近所のフランス文学者の方をお招きして、ジュール・ヴェルヌの『海底二万マイル』について語っていただいた会は非常に好評でした。

また、インタビューさせていただいた近所のお花屋さんに出張してもらい、花活けの講座を開いたこともあります。あるいは、地元の有機農家さんのドキュメンタリー映画を上映し、その農場で採れた野菜をみんなで食べるといった、この土地ならではの繋がりを感じるイベントも大切にしています。

家族で営む出版「エクリ」の形

空と樹と 長田弘・日高理恵子

私たちの出版活動の母体である「エクリ」は、いわゆる「家内工業」の形態をとっています。出版の企画や編集は私と妻が担い、デザインはグラフィックデザイナーである次男が担当しています。

家族で一貫して制作しているため、エクリの本や制作物には独特の統一されたテイストがあります。イベントなどで展示をすると「エクリさんの本だとすぐに分かりますね」と言っていただけることも多く、一年に一冊というゆっくりとしたペースではありますが、自分たちの納得のいくものづくりを続けています。

変わりゆく学芸大学と、変わらない庭の記憶

学芸大学

私が生まれ育った学芸大学は、近年、子育て世代の流入により人口が急増し、町全体の雰囲気が大きく変わりました。しかし、祖父の代から百年ほどこの地に住み続けている私にとって、ここは今も昔の記憶と地続きの場所です。

かつて、この辺りの家々はもっと一区画が広く、祖父の家にも立派な庭がありました。農林省に勤めていた祖父の庭には、ポポーという珍しい南国の果実や梨の木が植わっており、私は幼少期をそれらの木々に囲まれて過ごしました。

町がどれほど新しくなっても、こうした土地の記憶や古いお店、そして新しく移り住んできた人たちが共存しているのがこの町の面白さです。これからも半径4キロメートルの「きんりん」に目を向けながら、この小さな場所で対話を続けていきたいと思っています。


今回触れた主な活動・作品

  • フリーペーパー『きんりん』:地域の人々を紹介する小冊子
  • 『海底二万マイル』(ジュール・ヴェルヌ):読書会のテーマとなった一冊
  • エクリ(ecrit):家族で営む出版社
  • 『11人いる!』(萩尾望都):活動のヒントとなった漫画