多摩美術大学八王子キャンパスのアートテークギャラリーで、日高理恵子さんの退任展「空間と、自然光と、絵と」を見た。
タイトルに自然光とあるように、展示は大きく切られた窓からの外光によってのみ鑑賞する。この日は曇天の午後だったため、光量は抑えられている。窓外のキャンパスの緑が窓辺のモノトーンの作品を縁取っていて、描かれた葉叢が暗緑色を帯びていた。更にはすべての作品がフレームに収められていないので、私たちは画家が見つめ続けた空と樹に真っすぐに向き合う。日高さんは空を直に見るのではなく、間近にある枝葉を通して感覚するのだ。
窓のない展示室は、さながら薄暮の中である。時によって画家は、陽が隠れる直前の神社や庭で、この風景と対峙していたわけだ。
エクリで刊行した「空と樹と」の「あとがき」で、長田弘さんが書いている。
日高理恵子氏の樹々はしなやかな生命力にみちみちて、見るものを立ちどまらせ、沈黙させる。そして、ひとは樹下の人間にほかならないという澄明な認識に、わたしたちをみちびく。