三人の女
ローベルト・ムージル 河出書房新社
『木に登る王』と全く同じ、やはり嫉妬に駆られる話があります。こちらは木ではなく城壁に登る。それも、敵を寄せ付けないために造られた、ものすごく切り立った城塞です。ドイツの作家ローベルト・ムージルの中編集『三人の女』に「ポルトガルの女」という話があって、それがこの話です。舞台は神聖ローマ帝国の時代で、あちこちで群雄割拠している。その領主の一人で、戦えば傷を負うけれども必ず敵を倒していく豪気な男が、あるとき城の近くの野原で寝ていて、この本ではハエに刺されたと書いてあるのですが、私は誤訳ではないかと思っていて、蚊か毒虫ではないか。とにかく刺されて何日も高熱が続き、戦に出るどころか甲冑も着られない状態になる。そこへ領主の妃であるポルトガルの女のもとに、ポルトガルから幼馴染が訪ねて来ている。二人ともとても若く、奥方が楽しそうなので彼は放っておくのです。