「ぼくの体はbijiでできている」と言ったのは、[「きんりん」十号で紹介した「花すけ」](https://kirinbooks.jp/membership/kinrin/hanasuke/)の高橋健治郎さんである。 花屋さんたるもの、冬の凍える水にも、夏の頻繁な水替えにも負けぬ丈夫な体をもって、いつも大らかに笑っていなければならない。この彼をつくる、美味しくて栄養バランスも申し分なく、飽きがこず値段もリーズナブルな理想の食堂がbijiというわけだ。
長い間、美味しいパンといえばフランスのパンだった。住んでいたパリの五階の部屋から通りに出て、十メートル先の角を曲がり二件目のところにパン屋があった。螺旋階段の乗降を含めて約七分。薬缶の底にびっしりこびりついてしまう石灰のせいで味が締まるのだと言われたネスカフェと買いたてのバゲットが朝食だった。秋冬には窓の外で冷やしているバターを塗った。その繰り返しに飽きることはなかった。
遠い花の記憶は月見草だ。
「いい古書店のある街がいい街だとおもう」(『感受性の領分』)という詩人長田弘の言葉から、わが街の話をはじめよう。