怖い森というと、まずダンテの『神曲』の最初の文章を思い出します。地獄篇第一歌。「私たちの人生行路のなかば頃、正しい道をふみはずした私は一つの暗闇の森のなかにいた」。暗闇の森なんですね。「ああ、それを話すのはなんと難しいことか。人手が入ったことのないひどく荒れた森のさまは、思い出すだに恐怖が胸に蘇えってくるようだ。その森の難渋なことは、ほとんど死にも近い」——そう始まる。
読んだのは高校生の頃です。世界古典文学全集で、なぜか高校の時にこれとかホメーロスとかを一生懸命読んでいました。註がものすごく付いていて、各ページにびっしり入っている。当時はほとんど知識がないので、註を読んでいるだけでどんどんのめり込みました。
地獄篇から天上界まであるけれど、読んでいて一番面白くて迫力があるのはやっぱり地獄篇です。だんだんまともな世界に入ると、逆にあまり面白くなくなってしまう。

イタリア旅行でフィレンツェへ行った時、ウフィツィにダンテ像がありました。「ここちょっと写真撮って」と言って撮ったものです。ちょうど周りが工事中で空いていて、あの頃はウフィツィもゆったり入れました。あまり良い画像ではないけれど、かなり大きな銅像でした。
木林文庫チャンネル「世界の怖い森の本」
前に話したのは地獄篇でしたが、最後は天上篇に行きます。その時にダンテは、結局一緒になれなかったベアトリーチェ——十三歳の時から将来はと言っていた恋人——に会う。白い花に囲まれたところに彼女がいた、という場面です。その花が薔薇だと言われています。
木林文庫チャンネル「薔薇を育てた作家たち」
