グアテマラ伝説集

ミゲル・アンヘル・アストゥリアス

アストゥリアス『グアテマラ伝説集』

グアテマラの作家アストゥリアスの伝説集です。「火山の伝説」という話の書き出しがこうです。——六人の男が「樹の国」に住みついた。風に運ばれてきた三人と、川を流れてきた三人である。そのうち姿が見えたのは三人だけで、あとの三人は水のなかに隠れており、風に運ばれてきた男たちが山から水を飲みに降りてきたときにのみ、彼らの姿を見たのである。——「六人の男が樹の国に住みついた」。いい書き出しだと思います。

同じ伝説集の後半は、一種のシナリオのように構成されています。南米の神、羽毛の蛇——メキシコではケツァルコアトル、ここではククルカンという名で出てきます。ククルカンとヤイ(茴香)のやりとりがある。ククルカンが「わたしの腕のなかで話している愛よ、おまえを夢見ているのはこの私だよ」と言うと、ヤイは「誰であろうと、わたしを夢見ている人が目覚めたら、すぐにわたしはこの存在から、感覚の虚妄から、この身を消し去りたい」と答える。

これは『鏡の国のアリス』で、トランプの王様が目を覚ましたらアリスは消えてしまう、というやりとりとそっくりです。夢を見ている主体が目覚めたら、見られている存在は消えてしまう。まったく同じ構成だと思います。アリスと並んで、心に残る場面のひとつです。

木林文庫チャンネル「生涯忘れられない言葉」 2:45 / 4:04 / 5:24