宮崎学の写真集『柿の木』は信州伊那谷にある樹齢八十年ほどの柿の木の四季を撮ったものだ。我知らず、この木のたたずまいを当てはめながら、『柿の木のある家』を読み進めていた。丘の上に一つだけ守り残されたという木は丈高く伸びやかで、季節それぞれの美しさを見せているからだろう。ここからは小声で言う「新緑はかつてのわが家の庭こそ」と。
それにしても、柿の木の伐採が加速したのは昭和四十年代にはじまったゴルフブーム故とは知らなかった。傍らにあったものがみるみる消え去り、それが目の前のことだけではなく日本中を覆っていたという現象は数限りなくあったはずだ。しかし、気づきはいつでも仕切り直しのはじまりとなる。八年待てば、小さな実が生るだろう。「早く芽を出せ、柿の種」。
館長のコラム「柿の木のあった家」より