住まいの図書館出版局がいろんなシリーズを出していて、その中に『木』がありました。白洲正子さんは、作家としては文章がとっつきにくくて苦手だったんです。編集の仕事をしていた頃、白洲さんの本をやりませんかと声がかかったことがあって、ためらっていたら「ぜひ私にやらせてください」という人が入った。僕には荷が重かったかな、という感じもあります。
檜、欅、松、栃、杉——不思議なことに、字にすると全部一文字で、しかも木偏なんです。木偏といえば、子どもの頃に祖父母と旅行すると、夜は遊び道具がないので「じゃあ木偏の字を書いてごらん」と言われました。小学校の低学年か中学年の頃、二歳下の弟と一生懸命、知っている木偏を書いた記憶があります。杉とか松くらいしか書けなかったと思いますが。この本を見てそれを思い出しました。
一つ一つの木について、由来から、それを使って何が作られてきたかまで書いてあります。白洲さんは能をやる方ですから、能の舞台には必ず松があるし、舞台自体も木でできている。話があちこちに飛んで面白い。杉玉——新酒ができましたという印のあれですが——は日本固有のものかと思っていたら、これに類するものがヨーロッパにもあるそうです。新しいものができたときに何かを吊るす、という。内容は面白くて、私でも読めました。