犬は本よりも電信柱が好き

吉野朔実 吉野朔実劇場

吉野朔実さん——若くして亡くなってしまった漫画家です——が、何人かの本読みの仲間と集まって、いろんなテーマで話をする。好きな本、読み切れなかった本、読んだ中で一番の長編は何か、といった話です。友達の心理学者や編集者、それに彼女は漫画家なのでアシスタントの女の子たちも加わって、一冊ずつ話をする。

最後まで読めなかった本について語り合うところがあって、そこで挙がるのが、私が三冊の中で挙げた『アレクサンドリア四重奏』なんです。私は非常に印象に残った一冊として挙げているのに、この中では「読めなかったよね」「そうだそうだ」という話になっている。

今までで一番影響を受けた本は何、という話もしていて、一人はローベルト・ムージルの『僕の遺稿集』、一人は埴谷雄高の『幻視のなかの政治』、もう一人はロラン・バルトの『恋愛のディスクール断章』を挙げる。吉野朔実は「全部私読んでない」と恥ずかしそうにするのですが、この三冊を挙げた人たちは彼女より一世代上、つまり僕の世代に近いので、私はそれぞれ目を通しています。

世代が読んだ本と次の世代の本は当然違う。彼女は本読み仲間が挙げた本を一つも読んでいないというので「絶対読まなきゃ」という話をしたりしています。このシリーズは全部で七冊ほどあって、それぞれが一冊ずつ、あるいは同じ作家で二冊挙げたりして語っている。コミック作家は本読みが多いですが、ここに挙がる本は私も半分以上読んでいない。それだけでもびっくりするようなシリーズです。

木林文庫チャンネル「本読みが愛する漫画3選」