イアラ

楳図かずお

楳図かずお『イアラ』

気に入っている本のタイトルとして「イアラ」を挙げたことがあります。奈良時代、大仏の鋳造で人柱にされた女性が、銅を流されて亡くなる寸前に「イアラ」と聞こえる叫び声をあげる。それを耳にした恋人の男が、あれは何の意味だったのかと探し続けるうちに、永遠の生命を持ってしまう話です。

彼は生き続けて未来まで至ります。その未来では人間の姿も美意識も変わってしまい、いま美しいとされる人は排斥される。石を投げられ、お前は醜い、あっちへ行けと言われる。その中に、探していた女性——奈良時代の名は小菜女——を見つけて、連れて逃げる。ところが人類は月の形を変えてしまっていて、宇宙のバランスが崩れ、太陽が萎んでいく。その滅びの瞬間に立ち会うことになります。

恐怖のあまり彼女が「イアラ」と叫ぶ。そのとき男は意味を理解します。——その時私はやっと「イアラ」の意味がわかった。再び会いましょう、いつかどこかで。そういう意味だったのだ。意味のないただの言葉だったのだ。あの時聞いた「イアラ」の意味もそうだったのだ。もしかしたら、そのもっと前に聞いた言葉だったのかもしれない。——壮大なSFの漫画です。

この「再び会いましょう、いつかどこかで」は、エリュアールの詩の言葉に近い。——わたしがあなたとわかれても、わたしたちはたがいにおもいだすだろう。そしてふたりがわかれても、わたしたちはふたたび見つけだすだろう。——ほとんど繋がると思います。両方とも気になって、好きになった言葉かもしれません。

木林文庫チャンネル「生涯忘れられない言葉」

『イアラ』は、大仏を鋳造するときに人柱として女性を犠牲にする話です。橋を造るときに女性を埋めて橋を守らせるという風習と同じように、銅を流す時に女性を立てる。その銅が流れてくる時、恋人だった男に向かって叫び声をあげる。それが「イアラ」と聞こえる。「イアラ」とはどういう意味だったのか、と男は言葉の意味を探し続け、そのために永遠の生命を持ってしまう。

木林文庫チャンネル「本読みが愛する漫画3選」

この本と結びついている本

古本屋台QBB

『古本屋台』の中で『イアラ』が語られる。「再び会いましょう、いつかどこかで」という台詞を、屋台の親父と客が声を合わせて言う場面がある