木の声が聞こえますか

池田まき子 岩崎書店 2010

『木の声が聞こえますか』(池田まき子著)は女性で初めて樹木医となった塚本こなみさんの仕事ぶりを追ったドキュメント。塚本さんは足利市のフラワーパークへ藤の大木を移植するという力業をやってのけた人だ。塚本さんが移し替えた幹の直径一メートル、三百五十畳敷(当時)と云われる藤の木の大きさ、花房の見事さは口絵写真だけでも圧倒される。まさに栄華という言葉がしっくりくる藤の原である。

前例はなかった。初めて心臓移植を執刀した医師もかくやというところ。細やかに準備し大胆に動くだけでは足りず、前例を拓くためにはプラスαが不可欠となろう。木の移植では「みどりの指」たる、植物との特殊なコミュニケーション能力がそのα因子なのだ。木々は話すのだと、私も考えているが、安易にコミュニケーションを当てはめるのは妥当ではない。木は木の言葉を話すのだから。

館長のコラム「樹のお医者さん」より