『Le Cidre』はパリの書店で見つけたシードルの完本ですが、その前にブルターニュの話から。シードルはブルターニュの名産です。ブルターニュではシードルと、そば粉で作ったガレットを一緒に食べるのがスタイルで、去年フランスに行った時は最初にブルターニュから入りました。泊めていただいたお家では、ブルターニュと言ったらこれでしょうと、シードルとガレットを焼いてくださって。
近くにその方のお友達の家があって、庭に林檎の木が植わっているので、みんなで採りに行って林檎を摘んで、その林檎でアップルパイを焼いてくださった。林檎づくしの旅の始まりでした。
とにかく林檎が小さいんですよね。日本の林檎は袋を被せて大切に育てていて、それが輸出されるくらいですが、フランスの林檎はとにかく小さい。
何十年も前、妻の友人がブラチスラバに留学していて、パリに住んでいた頃に会いに行った時、パリで買った林檎を持って行ったら、彼女の第一声が「わぁ、西側の林檎だ」。こんな大きいのは食べたことがないと言うんです。当時の共産圏では、東の林檎はもっと小さかった。
フランスの林檎も小さいなと思った時に、ウィリアム・テルのことを考えました。子どもの頭に林檎を乗せて射落とす。僕らのイメージだと日本の林檎で、そこそこ大きいものが頭に乗っていると想像していたけれど、的はすごく小さかったんだな、と。テルの技量というか、子どもを撃ってしまうかもしれないという恐怖は、大変なものだったろうなと、この間ふっと思いました。
木林文庫チャンネル「りんごの本」
木林文庫を始めている時に、何回目かに行ったフランスの書店では、もう書店があるたびに木の関係の本を探して、特に林檎の本を探しているんだよと言うと、いろいろ探してくれるんです。
その一軒に、Jardinier ——庭師という意味ですから、それっぽい書店名ですが——というお店があって。そこで林檎の本を探しているよと言ったら、こういうのもいいんじゃないと言って出してきたのが、シードルの完本でした。
シードルの百科全集みたいな感じで、シードルの歴史や製法とか、あらゆることが図版入りで出ています。読めないけれど、こんな難しいの。でも、なかなかね。シードルが好きだから。
これは重かった。トランクに入れて持って帰って、すごく重かったです。
木林文庫チャンネル「パリ・モスクワ・ベルリンで「木」の本を探す」
木林文庫に洋書はほとんど入っていない。しかし、せっかくの機会なのでせっせと書店巡りもした。「庭師」という名のパリの書店で「木にまつわる本を探している。とくにリンゴ本が欲しい」と尋ねると「こんなのもありか」と持ってきたのが”Le Cidre”(シードル)という林檎酒の本。A4変型の上製本で400頁ほどの大著だったけれど、林檎の酒はシードルもカルヴァドスも好きなので躊躇なく購入。「魔の山」という名のベルリンの書店では”Äpfel fürs Volk”(直訳すると「国民のためのリンゴ」)をみつけた。こちらは小ぶりだけれど、天と小口が赤く着色され、ノンブルの位置には可愛らしい林檎が配されていて、実に美しい造りだ。
館長のコラム「もっともっと、りんご」より
