『夢十夜』を、能楽師でワキをやる安田登さんが語るのを聞いたことがあります。彼が語ると本当に恐ろしくて、文字通り背筋が凍る。漱石をやるときは面白い組み合わせをして、最初に『吾輩は猫である』をやるんです。お正月に猫が雑煮の餅をかっさらって食べて、歯に挟まって七転八倒するところ。彼がジタバタしながらやるのが非常に面白くて、観ている方も笑い転げる。その後に「第三夜」をやるので、落差がすごい。
安田さんと知り合ったのは、アッカド語——メソポタミアの楔形文字——の教室です。私はバビロニアの歴史に興味があって聞きに行った。彼は中国古代の甲骨文字を調べていました。集まっていたのは各国の古代文字に興味のある人たちで、アラビア語やヘブライ語をやっている人もいた。授業も面白かったし、そこで安田さんと知り合って、漱石を語る素晴らしさに触れたのはとてもラッキーでした。
木林文庫チャンネル「愛読書3選」