『木のぼりの詩』は画家、安野光雅の故郷津和野での少年時代を描いた画文集である。豊かな日々の最初に掲げられたのがタイトルとなった木のぼりのエピソード。
「きがついたとき僕はうちの大時計の下にねていました。頭がぼーッとしていました」
青桐の木にのぼっていた安野少年は枝が折れて地面に転落してしまったのだ。「僕はあのときから頭がおかしくなりました」
このような数々の遊びや村の行事、生活の一こまが、しみじみとユーモラスに積み重ねられている。安野は懐かしい点景情景を横長の見開きページに巧みに配していて、現代に甦った巻物絵師のようだ。
館長のコラム「木にのぼる」より