16冊
この本になぜ付箋を付けたかというと、Beech——ブナです。エクリで出した『木の戦い』の一番最初が The tops of the beech trees で始まるので、あっと思って。
はらだたけひでさんは、ピロスマニをみんなに知らせることにずっと貢献してきた方です。岩波での映画公開などにも関わっていました。ピロスマニに捧げる詩に絵をつけた、素敵な本です。
作っているのはエルメス財団です。「知ること 作ること」という総タイトルのシリーズで、これが第一冊目。この後に『土』が出ています。原題は le bois、つまり「木」ですね。
フランスで買った本で、「悪魔の美」、美しい悪魔という意味でしょうか。怖いけれど美しい、という意味合いがあると思います。その中に『神曲』地獄篇の挿絵があります。
ベアトリーチェは恋の象徴のように絵になっていて、一番有名なのがロセッティです。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティといって、ダンテという名前が付いているんですね。ダンテの肖像画は残っていますが、ベアトリーチェは残っていないので、みんな想像で描くわけです。
魔女というと、水木しげるさんがいろんな東西の妖怪を描いています。この表紙の絵の魔女の感じ——鼻が高くて、お婆さんで、スープの鍋で薬草か何かをグツグツ煮ている。これが僕らのイメージする魔女の典型ですね。
司修さんは文も絵もご自分で書いています。版画の作品で、非常に綺麗です。
ドイツの森というと、フリードリッヒです。暗い森。これは一人ではなく人が一緒にいるところですが、やっぱり暗い森の中。とにかく彼の絵は全体が暗い森で、どれを見ても陰鬱です。
「カニツンツン」も、タイトルの軽い感じが元永さんらしい一冊です。谷川俊太郎さんとは結構お仕事をされていました。
シャガールはブーケがすごく多くて、いろんな花を花瓶に入れている絵が多いでしょう。タイトルに薔薇と付いたものが何点かあるのですが、うちにある画集の中には薔薇と付いたタイトルはない。これは薔薇だろうな、というのが『恋人たち』です。BIRTHDAY、お誕生日に恋人に花を贈っているから、多分薔薇ではないかと考えています。
クレーにも薔薇の絵があります。クレーらしい描き方で、タイトルは『バラの庭』、ドイツ語で Rosengarten。基調が少し明るい煉瓦色で、薔薇がたくさん咲いているというシンプルな絵です。全部が赤ですが、ちょっと花弁の感じも描かれていて、良い絵ですね。かなり大々的な展覧会のカタログで、特に作品が多かった時のものだと思います。
絵本を読むようになったきっかけは仕事です。「えるふ」という広報誌をやるようになって、担当の方が——財団の担当者でしたが——すごく読書家で、絵本もよく知っている。その人が「今度の広報誌の表紙は元永定正さんにしたい」と言う。恥ずかしながら、私は元永さんの名前も知りませんでした。
『ヘッセの水彩画』もあります。晩年のものですね。ナチスの時代はスイスに亡命していました。出自はユダヤ人ではないけれど、書いたものはリベラルな部分が多いので、ドイツ国内にはいられなかったし、いたくもなかったのでしょう。ノーベル賞を受けたのは戦後です。
若冲とボッティチェリです。ルネッサンスの『ヴィーナスの誕生』と『春(プリマヴェーラ)』。春ですから絵の中にも花がいっぱい溢れていて、着ている服の絹にも花が描いてある。当時フィレンツェにあった植物が百種類以上、全体で描かれているそうです。
「もけらもけら」は文章が山下洋輔さん、絵が元永定正さん、構成が奥様の中辻悦子さん。そういうコンビでした。
若冲の薔薇が素晴らしい。『薔薇小禽図』、薔薇と——雀ではないと思いますが、なんとなくシジュウカラっぽい鳥。この絵に限らず、若冲の作品を大々的にたくさん観たのはこれが初めてでした。江戸期の絵は、花もどこか幻想的なものになりますね。