ナジャ

Nadja

アンドレ・ブルトン 稲田三吉訳

アンドレ・ブルトン『ナジャ』稲田三吉訳

シュルレアリストのアンドレ・ブルトンが書いた『ナジャ』も、うちに二冊あります。ブルトンでいちばん気になっている言葉は、ナジャと出会って間もない頃に彼女が言う一言です。——その星が心臓を持っていない一つの花の心臓のようなものだってこと、あなたにはお分かりにならないわね。——この言葉にブルトンが衝撃を受ける。いろんな人が引用する、とても印象的な言葉です。

ブルトンの詩には「断崖」という言葉が出てきます。——断崖に身を乗り出して見ると、お前の存在と不在の希望のない融合がある。私は見つけた、お前を愛することの秘訣を。——断崖という単語が好きで、それもあって覚えているのかもしれません。

フランス語で好きな単語がいくつかあります。éphémère(儚い)、prunelle(瞳)、それから transparent(透明)。ブルトンの「薔薇色の詩」に、——限りなく続く透明な草木の中を、君は獣たちを従わせるような速さでもって素早く散歩するだろう——という一節があります。この詩は全部が未来形で書かれていて、rai という音がずっと繰り返される。声に出して読むと、とても気持ちのいい詩です。

木林文庫チャンネル「生涯忘れられない言葉」

パリで泊まったのはサンドニという駅の近くで、サンドニ門がありました。ものすごく大きくて、革命前のものがそのまま残っている。パリの城壁にいくつかあった門の一つです。ブルトンが『ナジャ』の中でそのサンドニ門を「ひどく美しいけれども何の役にも立っていない門」と言うのですが、僕が見てもひどく美しいとは思えなくて、存在感はすごくあるけれど。美は人の目によって違いますから。

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