ドングリの本はほとんど絵本ですが、いくつか学術的にドングリを論じた本があります。その一つが『ドングリと文明』で、ドングリ全般について書いた本です。
そこにドングリイーター——acorn eater というのかな——という言葉が出てきます。ドングリを食べる民族は、日本と韓国と、アメリカ原住民。昔は食べるものがない時に中近東のメソポタミアでも食べていたのでしょうが、だんだん食べなくなって、我々くらいしか食べなくなったという話らしい。
古代ではドングリを挽いて食べていました。栃の実のように。チュニジアだったかな、オークの木のことを「粉の生る木」という名前で呼んでいたというくらいですから、小麦ができる前はドングリを挽いて食べていたんですね。
日本のドングリには樫や椎やクヌギなど色々ありますが、一つだけ食べられるのがある。マテバシイというのかな。炒って食べると確かに美味しかった。本当に食べられるんだと思いました。
ソウルに行った時に食べました。民泊のようなところで、寒天みたいになっていて、色はドングリのように茶色く、お豆腐くらいの大きさでゼリーみたい。決して美味しいものではなかった。粉も売っていたので、自分でゼリーを作って食べたりするのでしょう。マテバシイは香ばしくて美味しかったけれど、ドングリゼリーはね。


ドングリはオークですから、ヨーロッパの中心の木です。オークは木材としても細工しやすいし切りやすい、なおかつ頑丈だというので家具に使うし、建物にも使うし、ワイン樽もオーク。何にでも使う木です。
オークは神様でもあります。木はやはり神様ですから。日本だと神様が宿るというと杉が多いけれど、ロシアでも大工さんが家を建てる時、皮を剥いてそこにお祈りをしてから始めるといいます。
僕らはドングリを拾うのが大好きです。家のすぐ近くに帽子屋さんがあって、うちはドングリ本がたくさんあるというので、ドングリ本と彼女の作る帽子——ドングリも帽子をかぶっていますから——のコラボで、ドングリ展をやりましょうと言ってやったことがあります。そのためにあちこち拾いに行きました。


ずいぶん拾いましたね。新宿御苑、林試の森、碑文谷公園、駒沢公園。軽井沢でも拾ったし、行くところ行くところ下ばかり見て。海外へ行ってもモスクワで拾ったし、ベルリンでも拾っています。




都内の公園はずいぶんドングリ集めをしました。種類が多くて面白かった。イメージどおりというか、ドイツのドングリは大きいんですよ。ドイツ人は大きいし、ドングリもデカいんだと思ったくらい。

まだ東欧が東側だった頃、ハンガリーへ行きました。ブダペストに一泊だけ。ドナウ川の橋のところで二人で座っていたら、カンカンと実が降ってきて、石畳ですごく乾いた音がした。そうしたらあなたが「カシタン」と言ったんですよね。カシタンは栗なのですが、あれはきっと栗ではなくて栃だったのでしょう。ドングリというと、そのカーンという音とカシタンという音感がすごく結びついています。
ドングリ本を集めているというので、ドングリの絵を描いてくれた方がいます。ドングリの絵を描いてと頼んだら、思いがけない金色のドングリを描いてくださった。なかなか存在感があって、良い絵だと思います。

『空と樹と』の時は空ばかり見上げていましたが、ドングリは下ばかり見るようになってしまいました。
木林文庫チャンネル「どんぐりの木」
