好きなコミック作家、諸星大二郎の『夢の木の下で』です。彼は『西遊妖猿伝』という西遊記をもとにしたコミックを今も連載しています。
あまり物が実らない場所に住んでいる、古代に近い設定です。村の人たちは一人が一本の木の中に住んで、そこを家にして、木の樹液を食べ物にして養われている。村にはタブーがあって、村を囲む高い絶壁は、そこから入っても出て行ってもいけないと言われている。
ある時、主人公の女が、入ってきた男の姿を見て自分も登ってみようと思い、崖のてっぺんから向こうを見る。その世界に映ったものは——という短編です。
それから何世紀も経った後の話が同じ本に入っています。現代の格好をした男が、シルクロード風の砂漠地帯を案内人と歩いていくと、ある村の住人はみんな木の下で木に支配されている。そこの言い伝えでは、初めて絶壁を越えてしまった男と女が、いまだに禁忌を破った人として名前を語り継がれている。何百年経っても木に支配された住人である、という設定です。
諸星大二郎の絵はいつもそうですが、静けさがあって、それでいてとても不気味な雰囲気を残しています。
木林文庫チャンネル「樹と人を描いた名作漫画」
