一輪の薔薇というと最初に浮かぶのが『星の王子さま』です。最初に星にいる時、薔薇が一輪だけあって、ものすごくわがまま。「私は世界に一本よ」と言って、風邪をひくから風が吹いた時は囲ってとか、注文ばかり多い。わがままな女性の象徴のような薔薇で、それでも一生懸命お水をあげるんですね。
別の星の薔薇園に行くと、薔薇がいっぱい咲いている。王子様が見ると自分のあの花にそっくりだった。「君たちは誰?」と王子様はびっくりして尋ねる。「私たちは薔薇よ」と薔薇たちは答える。あの花は世界でたった一つの花だと言っていたのに、この庭には同じ花が五千本も咲いているじゃないか、と。

木林文庫チャンネル「薔薇を育てた作家たち」
「バオバブは私の夢の樹だ」という武満徹の文を以前引いたけれど、バオバブと云えば、『星の王子様』から知った人が多いと思う。抜くのが遅れるとどうしようもなくはびこって星を覆い、酷いときには星そのものを破裂させてしまう悪いやつ。挿画も大いにそのイメージづくりの助けとなった。サン・テグジュペリは郵便機からもバオバブを見たのだろう。 テグジュペリの樹の言葉で気に入りをひとつ。「林檎の木の下にひろげられた卓布の上には、林檎だけしか落ちてこない。星の下にひろげられた卓布の上には、星の粉だけしか落ちてこないわけだ」 バオバブを悪魔が引き抜いて投げたら、根と枝が逆さになった話がアラビアにあると、『バオバブの記憶』という写真集を出している本橋成一が書いている。この本こそ、バオバブを知るのにうってつけだ。本橋はセネガルの村に入り、バオバブと共に生活している人々を撮った。
館長のコラム「バオバブは夢の樹」より
