木林文庫 KIRIN-BUNKO
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薔薇

14冊

19本の薔薇

ミルチャ・エリアーデ

エリアーデの『19本の薔薇』も意味深長です。エーコと同じで、エリアーデもルーマニアの宗教学者。執筆を主にしていたのはチャウシェスクが独裁をふるっていた時期で、最後にはフランスに亡命します。その政治的な背景がすごく含まれていて、『19本の薔薇』というのも象徴的です。

オーウェルの薔薇

レベッカ・ソルニット

すごく意外だったのがジョージ・オーウェルです。『1984』や『カタロニア讃歌』——スペイン内戦の話ですから、ものすごくラディカルな人でしょう。ラディカルな人が薔薇を育てないわけではないけれど、『オーウェルの薔薇』という本が最近出て、そのタイトルを見た時にすごく意外でした。オーウェルの薔薇? と。レベッカ・ソルニットという人で、これが面白かった。

薔薇 悲歌

渋沢孝輔

日本では渋沢孝輔の『薔薇 悲歌(エレジー)』。すごく豪華な本で、浮き彫りが入っていて、薔薇のデッサンがあります。この絵も、それにこの字も瀧口修造なんです。瀧口修造はもちろん自分で詩も作品も絵も描く人ですが。

シャガール

マルク・シャガール

シャガールはブーケがすごく多くて、いろんな花を花瓶に入れている絵が多いでしょう。タイトルに薔薇と付いたものが何点かあるのですが、うちにある画集の中には薔薇と付いたタイトルはない。これは薔薇だろうな、というのが『恋人たち』です。BIRTHDAY、お誕生日に恋人に花を贈っているから、多分薔薇ではないかと考えています。

パウル・クレー

パウル・クレー

クレーにも薔薇の絵があります。クレーらしい描き方で、タイトルは『バラの庭』、ドイツ語で Rosengarten。基調が少し明るい煉瓦色で、薔薇がたくさん咲いているというシンプルな絵です。全部が赤ですが、ちょっと花弁の感じも描かれていて、良い絵ですね。かなり大々的な展覧会のカタログで、特に作品が多かった時のものだと思います。

ボッティチェリ

サンドロ・ボッティチェリ

若冲とボッティチェリです。ルネッサンスの『ヴィーナスの誕生』と『春(プリマヴェーラ)』。春ですから絵の中にも花がいっぱい溢れていて、着ている服の絹にも花が描いてある。当時フィレンツェにあった植物が百種類以上、全体で描かれているそうです。

マルテの手記

リルケ

リルケには薔薇の詩集もありますが、有名なのは自分の墓碑に薔薇の言葉を入れてくれと頼んだという話です。墓碑だから短い。「薔薇よ おお、純粋な矛盾 夥しいまぶたの奥で 誰の眠りでもないという喜び」。純粋な矛盾、というのが不思議です。

リュシェンヌに薔薇を

ローラン・トポール

本としてはタイトルから『リュシェンヌに薔薇を』。書いたのはローラン・トポール、フランス語で書く作家で、出自はポーランドでしょうか。一時すごく評判になって、どういう話か分からなくて読みました。フランス語で書いてあるのに、このタイトルだけ英語になっているんです。

ルバイヤート

ウマル・ハイヤーム

薔薇はかなり古くから世界中の人に愛されていて、同じような表現が『ルバイヤート』——ペルシャの詩人ウマル・ハイヤームの文章を集めたもの——の中にあります。朝日に浮かぶ薔薇の蕾、薔薇の綻び、という表現です。もうすぐ咲くという状態が美しいというのは、古今東西みんな思うんだな、と。十一世紀頃のペルシャと言われています。

伊藤若冲

伊藤若冲

若冲の薔薇が素晴らしい。『薔薇小禽図』、薔薇と——雀ではないと思いますが、なんとなくシジュウカラっぽい鳥。この絵に限らず、若冲の作品を大々的にたくさん観たのはこれが初めてでした。江戸期の絵は、花もどこか幻想的なものになりますね。

星の王子さま

サン=テグジュペリ

一輪の薔薇というと最初に浮かぶのが『星の王子さま』です。最初に星にいる時、薔薇が一輪だけあって、ものすごくわがまま。「私は世界に一本よ」と言って、風邪をひくから風が吹いた時は囲ってとか、注文ばかり多い。わがままな女性の象徴のような薔薇で、それでも一生懸命お水をあげるんですね。

不思議の国のアリス

ルイス・キャロル

トランプの女王が出てきて、赤薔薇と白薔薇の話があるでしょう。一生懸命に白い薔薇を赤く塗っているところ。「ちょっと伺いますが」とアリスはおずおずと言いました。「どうしてこの薔薇にペンキを塗っているんですか」。5と7は黙って2を見ました——この5と7とか2というのはトランプですね。

老薔薇園

金子光晴

金子光晴が『老薔薇園』というのを書いています。金子光晴はなかなかしたたかな人ですから、老薔薇園というくらいで、何千本もあるような薔薇園を歩くのですが、萎れたのが多くて、その中を歩く。美しく咲き誇った薔薇よりもそちらに目が行っている、というような詩です。

薔薇の名前

ウンベルト・エーコ

文学というと、タイトルからすると最初に浮かぶのは『薔薇の名前』でしょう。でもこれは薔薇そのものの話ではない。何で薔薇なんだっけ、すごく面白かったのに内容を忘れてしまった——僕もそうなんです。この分厚い二巻本を二人とも一気に読んでいるのに。

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