19本の薔薇

ミルチャ・エリアーデ 住谷春也訳

エリアーデの『19本の薔薇』も意味深長です。エーコと同じで、エリアーデもルーマニアの宗教学者。執筆を主にしていたのはチャウシェスクが独裁をふるっていた時期で、最後にはフランスに亡命します。その政治的な背景がすごく含まれていて、『19本の薔薇』というのも象徴的です。

訳したのが住谷春也さん。僕らが出した『山の家 クヌルプ』のオーナー松浦さんと同期で、松高の後輩にあたるのかな、少し被っているんです。奥様がルーマニア人で、よくクヌルプにいらしていた。そういう関係だと聞いてクヌルプの本を送ったら、すごく喜んで、心に残る、これ以上ない賛辞をくださいました。松浦のことをこんなふうに書いてくれて、と。

中沢新一が帯文を書いています。「小説家エリアーデは、時に小説家エーコ氏のローマ的知性は神秘を手玉に取るという不遜を犯しがちだが、ルーマニア人エリアーデはあくまでも神秘を愛し、神秘の中に住み着こうとするからだ。今世紀最大の宗教学者は、最後に書いたこの大小説の中で、小説が学問を完成し、現代の知性が古代の神話の語りえなかったものを語り尽くすという彼の生涯の理想に、素晴らしい実現を与えてみせたのだ」。素晴らしい。この通りで、タイトルも言い尽くしています。

最後のほうで19本の薔薇をもらって、一緒に住んでいる女性が「6本枯れたからこれ捨てましょう」と言う。19から6を引くと13でしょう。「良い数字だ」と。なかなかこれも意味深なことを言うんです。

木林文庫チャンネル「薔薇の本」 22:42 / 23:16 / 24:12 / 25:04