ライラック通りのぼうし屋

安房直子 絵 小松桂士朗 岩崎書店

安房直子作/小松桂士朗絵『ライラック通りのぼうし屋』岩崎書店

『ライラック通りのぼうし屋』(安房直子)は、今では花が咲かなくなって久しいライラック並木に店をかまえる年老いた帽子屋が主人公の童話である。ある晩、羊が訪ねてきて、自分の毛を刈ってできるだけたくさんの帽子をつくってもらいたいと注文するのだ。不思議な話の起こし方に黙ってついて行く。面白そうなので、どんどんついていきたくなる。

羊の帽子に導かれて踏み入ったのはライラックの花盛りの町である。この町で帽子屋は青い花を集めて帽子をつくる。その帽子は……、という展開。

童話なので、挿絵がたっぷり入っている。が、その挿絵、帽子屋も羊も街路もアクが強すぎているように思えて、物語を味わう妨げになってしまうのだ。しかし35年間で20刷にもなっているから、絵が邪魔になるというのは、もしかしたら私一人なのかもしれない。

絵と文字を見る脳の場所は異なっているそうだから、私としては片目を閉じて、文字のみを追って再読することにしよう。

木林文庫にある安房直子作品で挿画が素晴らしいのは『風と木の歌』だ。この本に添えられた司修の絵は個性的でありながら自己主張しない。それは作品の登場者たちそのものなのだ。カバーと表紙絵が異なっているのも得をした気分にさせてくれる。

館長のコラム「宇宙の青で — ライラック」より

文字通りのライラックで『ライラック通りのぼうし屋』。岩崎書店で、文章は安房直子さんです。安房直子さんの童話は他にも読んでいて良いと思うのですが、これは内容と絵が今ひとつマッチしないと感じます。なぜこの絵なのかな、と今回見ても思う。

すごく人気があって、1970年代に初版が出て、私が買った時で20刷が2011年ですから、子どもによく読まれているんですね。

書き出しがすごく良いんです。「ライラック通りに古い帽子屋があります。よく気を付けていないと見過ごしてしまいそうな小さな店です」。そのあとがエクリっぽくて良い。「こういう人は大抵変わり者なのです。お金儲けとか流行とかいうことにほとんど無関心で、まるで売れるあてのないような品物を夢中でこしらえるのです。この人もそうでした」。

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