8冊
椿の本は時代小説が多いのですが、その中で時代小説としてぎりぎりの一冊です。ジョン万次郎の伝記小説。土佐の漁師だった彼は遭難して無人島に流れ着き、アメリカの船に助けられます。そこからが語学の天才で、船長に気に入られてアメリカの学校に入り、ゼロから始めたのに首席で卒業する。
「ものと人間の文化史」シリーズの一冊です。椿が日本史の中でどう扱われてきたかを書いていて、木として一番愛されたのは江戸時代だとあります。将軍が椿を好んだので、江戸期にはずいぶんもてはやされた。牡丹などもそうですね。椿全般を知るには非常に役立つ本です。著者の有岡さんは、植物を文化史的な視点でいろいろ書かれている方です。
日露戦争・日清戦争のころの話で、まだ田舎では牛や馬を引いて荷物を運んでいた時代です。そこに椿の木があって、牛や馬を繋いでおくと葉を食べられて枯れてしまう。それがもとで木を植え替えるという童話です。読んだあと、これは教科書に採用されて感想文を書かされるんだろうな、と思うような内容でした。
葉室麟の小説は割と好きで、全部が時代小説です。名前のとおり生き様が凛としていて、流されない。藩の抗争に巻き込まれるという時代小説のパターンなのですが、その中でも自分を律してどちらにも流されない。
石牟礼道子さんというと水俣が印象的で、『苦海浄土』の恐ろしい記述が頭に浮かびます。これは彼女がまだ四、五歳の幼女だった頃のことを書いたもので、記憶力がよく、耳もよかったのでしょう、おばさんたちの話を聞いて覚えていたことを書き起こしている。それがすごく美しい。
写真家の上田義彦さんが、同名の映画『椿の庭』を撮っていて、その気に入った場面をスチール写真にした写真集です。葉山の、海の見える古い木造家屋に住む女性の話で、まもなくその家を手放すという直前の物語。映画は観ていないのですが、この写真集を見て、観たら素晴らしかっただろうなと思いました。
梨木香歩さんは不思議なタイトルを付ける方です。カバーの絵も古代の海幸彦・山幸彦を使っていて、登場人物の名前もそう。いかにも古事記っぽいタイトルなのですが、場所は大和のあたりかと思ったらそうでもなく、シュロの木が生えているような土地を訪ねていく。
「椿の木の下で」という一編があるので、椿の本に入れました。猫が主人公で、絵としては猫耳をつけた小さな女の子ですが、物語は猫の話です。可愛がられている小さな猫のところへ、主人が捨て猫を拾ってくる。その子がちゃっかりしていて、飼い主が来るとへたっとして「私だめ」という姿を見せ、いないときにはチビにちょっかいを出して虐める。訴えると「あんた嫉妬してるんでしょ」と言われてしまう。巧い描き方です。