『静かな木』は藤沢の遺作短編集とされる単行本で表題作を含め三作が収められている。藤沢周平の書いた木と云えば『漆の実のみのる国』で、上杉鷹山が逼迫した藩財政を建て直す方策として植えさせたハゼの木だ。
「静かな木」は還暦間近の主人公が見上げる欅の老木。隠居侍はその立ち姿に己の終末を見立てようとしているのだが、その穏やかな日々が俄かに波立つ。数十年前の因縁がからむ話が淡々と実に淡々と語られ、終わる。藤沢もののファンとしては唸ることなく頷き、静かに頁を閉じることになる。
館長のコラム「時代小説の木は何処」より