桜守のはなし

佐野藤右衛門 講談社 2012

「残りの360日が桜にとってはたいせつなんです」と。『桜守のはなし』(佐野藤右衛門著)の穏やかな語り口に導かれて頁を繰ると、桜の見回りに同行している気持ちになる。小学生から花見酒好きまで幅広い年代に開かれた本で、5日間しか見ない桜のことがよくわかる。

私もまた花を見て木を見ずの方だが、たぶん十年程前から酒宴人口が増えているような気がする。家人と二人、桜の花の満開の下でひっそりと酒食をしたことが幻のようだ。今ではその公園に着くかなり前から酒の匂いが流れてくる。いいではないか、酒なくてである。だから、アルコール類の持ち込みを禁止して、持ち物検査なる暴挙までした某公苑には腹が立つ。ゴミの持ち帰りを徹底させれば済むことで、なにより5日間の賑わいを桜が喜んでくれるだろう。

館長のコラム「樹のお医者さん」より