中野美代子さんの『契丹伝奇集』にも、木に妙なものが生る、結構怖い話があります。契丹はモンゴルのあたりでしょうか。その中に、ワクワクの木という名前の木の話が書かれています。
七五一年といいますから、イスラムと当時の中国——唐ですね——が激突した、タラス河畔の戦いがあった年です。この時はイスラム側が大勝利して、唐の捕虜たちが王宮に連れて来られるのですが、その中の一人が妙な鉢を持って引っ張られてきた。
イスラムの王が「それは何だ」と聞く。唐とイスラムはものすごく離れているので、聞いてもすぐには言葉が通じない。唐の中国語をまずトルコ語に訳し、トルコ語をペルシャ語に訳し、ペルシャ語をアラビア語に訳して王様に伝える。三つも四つも通訳を経て、ようやく「ワクワクの木です」と伝わるんですね。
王が近づいて見ると、木の枝に何か変なものがぶら下がっている。よく見ると、赤ん坊が実になって何人もぶら下がっている。「何だこれは」と言うと、その声に喜んで子どもたちが笑い声をあげる。王様が喜んでちょっと触ると、一気に黒く萎んで、みんな落っこちてしまう——という話です。
木林文庫チャンネル「おかしな木」
