『樹のうえで猫がみている』は、やまだ紫という漫画家の詩画集です。木林文庫について書いた冊子の中でも、自分の気に入ったタイトル——タイトルが面白い本として、この一冊を挙げています。
装丁は南伸坊さんです。以前お話しした広報誌で河合隼雄さんと対談していただいたことがあるのですが、河合先生も南さんもしょっちゅう可笑しな話ばかりをするので、その時は「好物は冗談」というタイトルでお話ししてもらいました。南さんは初めてお会いした時にびっくりしたのですが、いつもご自分でおむすび形の顔を描いていて、確かに遠くから見てもすぐ分かるような、おむすびのような方なんです。
装丁に使ったのは、猫がどてっと横になって見下ろしているのではなくて、こちらを見上げている絵です。全部が詩画集で、いろんな表情の猫の絵が入っています。眠っているところ、娘が食べているフライドポテトを狙っているところ、抱かれてうっとりしているところ、歯を剥き出して大あくびをするところ。
彼女がなぜこの詩画集を描いたかを、さきほどの冊子に書きました。——子どもの頃の夢の一つが、猫と仲良く暮らしたいというものだった。作者の手になる猫は、ある時は満ち足りた眠り猫であり、またある日は物言わぬ瞳で人の心の移ろいを見ている。署名となった猫は松の木の股に寝そべって、おき去られて淋しい母親を遠くからじっと見ているのである。
人の心を覗き込むような表情もするし、のったりとただ寝ている表情もする。猫は百面相で、いつまでも飽きない。それを詩で、絵で描いています。
台所でほうれん草を茹でながらいろんな歌を歌っていて、荒城の月を歌うと不意に涙が溢れてしまったという詩があります。それを猫がじっと顔を覗かせて見ている、という絵になっています。とても好きな詩画集です。
木林文庫チャンネル「「猫の木」コーナー」
