先日の林檎の回で、猫の木のコーナーもあるという話をしました。林檎やドングリに比べると冊数は少ないのですが、好きな本が何冊かあります。その一冊が長田弘さんの絵本『ねこのき』。絵は大橋歩さんです。
表紙を見ると分かるのですが、長田さんもこれをくださる時に「この猫、ヒゲがないんだよね」とおっしゃっていました。確かにツルンとしています。長田さんは装画に一切注文をつけない方なので、出来上がってからヒゲのない猫だと気づかれたのだと思います。
大橋歩さんがどういう意図でヒゲのない猫を描いたのかは分かりませんが、一つ気がついたことがあります。この絵本の版元はクレヨンハウスで、クレヨンハウスのロゴも猫なのですが、やはりヒゲがない。そんなこともあるのかな、と。



うちが『空と樹と』を出したのが2007年11月15日で、この献辞をエクリ宛に長田さんが書いてくださったのが同じ年の11月24日になっています。本を出した後、どこかの書店でトークイベントをやった際に、この扉に書いてくださったのだと思います。




この絵本を描くにあたって、長田さんがあとがきに書いています。——散歩する道を決めて、いつも同じ時間にその道を歩いていくと、猫はどの猫も必ずお気に入りの場所を持っていて、その場所は季節が変わるごとに変わりますが、一度そこと決めたら、どんなときもここと決めたその場所に落ち着いています。
——あの猫はそこ、この猫はここと、毎日歩く道でいつかずいぶん多くの猫たちと知り合いました。こっちがそれぞれの猫たちの顔を覚えるように、猫たちもまたこっちの顔をいつか覚えるらしく、今ではもう身構えたり、さっと身を翻したりしません。そうして親しく挨拶を交わすようになった顔見知りの猫たちの一匹が、ある日ふっつり姿を消し、それきりになりました。この小さな絵本を、そんないなくなった猫のために。
木林文庫チャンネル「「猫の木」コーナー」
