31冊
C.W.ニコルさんは黒姫に長く住んで日本語も達者でしたが、元々はウェールズの方です。ニコルさんと宮崎駿さんがなぜ対談しているかというと、ニコルさんは黒姫に自分で土地を購入してそこを守っていく、宮崎さんはトトロの森。二人とも樹木が失われていくことへの怒りがあり、悲しみがあり、危機感を持っている。それを共有して、自分たちも立ち上がらなくてはいけないし、みんなも共有してくれ、という結構熱い対談です。
フランスで買った本で、「悪魔の美」、美しい悪魔という意味でしょうか。怖いけれど美しい、という意味合いがあると思います。その中に『神曲』地獄篇の挿絵があります。
ジークフリートの元になる話は北欧神話、アイスランド・サガなんだそうです。バイキングの時代ですから、かなり大きい。読みましたが、全部が王位を巡るひとごろしの話で、王が前の王を殺して次々と続く殺戮の歴史です。凄まじい。フランク王国のメロヴィング朝の王朝史も読んだことがありますが、それも次から次へと前の王を殺していく話でした。
森の妖怪や悪魔やお化けの話は、僕が持っている中では子どもの本が多いんです。『お化けの森』『森のお化け』『森おばけ』——タイトルがまるで同じで、見ただけでは区別がつかないでしょう。それぞれ個性は違うし、内容ももちろん違うのですが、タイトルはそっくりです。
グリム童話は、さきほども言ったように食料危機の時の話が多い。この本はその後のナチスのところまで、食料危機と結びつけています。
バーバ・ヤガーって聞いたことありますか。鶏の足の上にログハウスを乗せて、臼に乗って飛ぶという、すごい妖怪です。日本語にするとお婆ちゃんという感じですが、バーバはお婆ちゃんですからそのままですね。これはすごく悪い。
これも似ているでしょう、タイトルが。『マジョモリ』、梨木香歩さんです。「お化けの森」「森のお化け」「森お化け」——タイトルだけ見るとまるで区別がつかない。それぞれ個性は違うし内容ももちろん違うのですが。
ロシアも森の民ですから、森の悪魔がいます。レーシー——ロシア語で「レース」が森という意味です——は森の妖怪、森の精霊で、両頬が青みがかっている。彼の血が青い色をしているんですね。緑の飛び出した眼と密生した眉毛を持って、緑の長い髭をたくわえて、足は鶏の足のよう。
日本の森の怖い話というと『遠野物語』です。幽霊が出てくるというより、暗い森を歩いているとなんとなくもののけが憑いたような気がする、不思議な目に遭う、というのが中心です。
タイトルは『森の大あくま』。森はやっぱり多いですね。絵はあべ弘士さんです。
これは男のほうの、森の魔法使いです。木の袂でグツグツやっているけれど、薬草ではなくて料理をしている。変なものを煮ているわけではなくて、生活をしている魔法使いなんです。イギリスの話でしょうね。
怖い森というと、まずダンテの『神曲』の最初の文章を思い出します。地獄篇第一歌。「私たちの人生行路のなかば頃、正しい道をふみはずした私は一つの暗闇の森のなかにいた」。暗闇の森なんですね。「ああ、それを話すのはなんと難しいことか。人手が入ったことのないひどく荒れた森のさまは、思い出すだに恐怖が胸に蘇えってくるようだ。その森の難渋なことは、ほとんど死にも近い」——そう始まる。
水木しげるが遠野物語を描いていて、いくつものエピソードがあります。その中の、森で不思議に出会う話が気に入っています。ちょうど百話目です。
魔女というと、水木しげるさんがいろんな東西の妖怪を描いています。この表紙の絵の魔女の感じ——鼻が高くて、お婆さんで、スープの鍋で薬草か何かをグツグツ煮ている。これが僕らのイメージする魔女の典型ですね。
鼻は鷲鼻で、水木さんの絵に似ています。でも絵を描いているのはささめやゆきさんで、少しユーモラス。怖いというよりユーモラスです。
まるで同じタイトルの本が並びます。C.W.ニコルさんと司修さん。もちろん内容は全く違います。ニコルさんのほうは自伝ではないけれど、元々ウェールズにいた頃の話で、面白いですよ。
司修さんは文も絵もご自分で書いています。版画の作品で、非常に綺麗です。
『魔女の森』『マジョモリ』『魔女の森へ』——タイトルが全部そっくりでね。それぞれ個性は違うし、内容ももちろん違うのですが。
アフリカにも妖怪の話があって、ナイジェリアのチュツオーラです。『遠野物語』ではないけれど、言い伝えを元に話を膨らませる。妖怪といってもおどろおどろしいというより、だまくらかすくらいのイメージで、読んでいて面白い。文字通り Bush of Ghosts ですから、森の幽霊ですね。
ドイツの森というと、フリードリッヒです。暗い森。これは一人ではなく人が一緒にいるところですが、やっぱり暗い森の中。とにかく彼の絵は全体が暗い森で、どれを見ても陰鬱です。
マダガスカルの話です。絵もこの方が描いていて、実際にあの辺に住んでいらした。木林文庫にもいらっしゃいました。怪物といっても特に悪いことをするわけではないんです。
ルサールカはいろんな絵になっていますし、『ディカーニカ近郷夜話』の「五月の夜」にも書かれています。
森の妖怪関係で一番新しく手に入れた本です。ぜひ仲間に入れたいと思ったのは、挿絵が山村浩二さんだからです。この人の絵がものすごく好きで、見つけた途端に手に入れたいと思いました。文章は富安陽子さん、『やまんばあさん』を書いた方ですね。
ドイツの怖い森で最初に浮かぶのが『ヘンゼルとグレーテル』です。日本でもそうですが、しょっちゅう飢饉に襲われているから、子どもを口減らしのために捨てるということがかなりあったのでしょう。継母が旦那をそそのかす、父親は可哀想だと嫌がる、けれど飢えてどうするのと言われて捨てさせてしまう。実の母ではあんまりだというので、だんだん継母という設定になったと言われます。
以前おばあさんの回で紹介した『やまんばあさん』、その原作の方が富安陽子さんです。『ひそひそ森の妖怪』の表紙にも、逆さまになって隠れています。
チェーホフの『ワーニャ伯父さん』という戯曲がありますが、あれは元は『レーシー』——森の主、森の精霊というタイトルで最初に書かれたものを改作したのだそうです。レーシーだとひねり過ぎている感じがあったのでしょうか。
森というのは、妖怪だとかお化けだとか、怖いものが跋扈するイメージがあるでしょう。だから今日は、森の中のそういう妖怪の類いの本の話をしようと思って、いくつか集めてみました。
ドイツの森というとゲーテの『魔王』です。森の中を行く話で、シューベルトが曲をつけている。子どもが病気になって、父親が早く町の医者に見せようと馬で走る。魔王が子どもを攫おうといろんな幻影を見せて自分の方へ取り込もうとする。父親は「あれは幻だ、木の枝だ」と言いながら必死に走るけれど、町に着いた時にはもう死んでいて、魔王に連れて行かれたという。歌を聴いても怖いし、話を聞いても怖い。あれも森の悪魔の一つの話です。