Robert Coutelas 1930–1985

ロベール・クートラス作品集 ある画家の仕事

ロベール・クートラス エクリ

エクリ『Robert Coutelas 1930–1985』。全二巻・函入り

エクリの本は全部、次男の悠里がデザインしているんですが、このクートラスに関しては彼が特に思い入れがあって。フランスに行って作品を撮影していますし、彼を紹介してくれたのも悠里でした。

クートラスの作品に魅せられて、後に僕らは全作品集を出すんですが、それに大きなご協力をいただいたのが、ミナペルホネンを設立された皆川明さんです。皆川さんがSUで初めてクートラスの作品をご覧になって。

皆川さんが、ずいぶん後になるけれども、やはり全集を出しましょう、全作品集を出しましょうと言ってくださって。

函から出した第一巻と第二巻
カルトの組写真。並べる順と間隔にクートラス自身の指定があった

岸真理子さんはパリの郊外に住んでいらっしゃって、ピアニストのベルトランさんというとてもご理解のある方がパートナーです。そのご自宅がクートラスの保管場所なんです。悠里もそこへ行って、何日かかけて全作品をカメラマンと一緒に撮ってきました。一週間近くかかったと思います。

組写真を撮る時なんかは、展示の仕方にこだわりがあった人らしくて。組写真だと十何枚あるけれども、それをどういう順番で、カルトとカルトの間が何ミリというふうに指定があったらしくて。緻密な作業が必要だったみたいです。

コルクを削った人形や、パリの土を素焼きにした小さな作品
『Robert Coutelas 1930–1985』の頁

三島のクレマチスの丘にあるベルナール・ビュフェ美術館でも展覧会をやってくださいましたし、京都の大山崎山荘美術館も大きな展覧会でした。大山崎は非常にクートラスの作品にピッタリの空間で、とてもいい展覧会だったと思います。

その時、パートナーの岸真理子さんと建築家の中村好文さんの対談がありました。生前のクートラスに会っているのは、この中村さんと、あと画家の橋場信夫さんです。

皆川明さんと岸真理子さん
大山崎山荘美術館の展示風景
大山崎山荘美術館展示風景 Photo by Fumihito Katamura

中村さんは面白いエピソードを話してくださいました。一番安いタバコは葉っぱを買って自分で巻くんですが、その紙巻機の銘柄が二人とも一緒で、それで気が合ったという話をね。生前を知る方の貴重なお話でした。

彼は真理子さんに、「親方の取り分」——フランスではリザーブ(réserve)と言うそうですが、作った中で一番良いものは親方が自分の物として確保する、という言い方があって。五百枚だけリザーブとして絶対売るなということを遺言されたそうです。

大山崎山荘美術館の展示風景
大山崎山荘美術館展示風景 Photo by Fumihito Katamura
大山崎山荘美術館の展示風景
大山崎山荘美術館展示風景 Photo by Fumihito Katamura

それ以外でも五千枚近くあるから見切れない。その見切れないほとんどを悠里が撮影してきたわけです。

これだけたくさんの作品を載せたにも関わらず、載せきれずにこぼれてしまった作品がいくつかあります。ワインのコルクを削って人の形を作ったり、パリの土を集めてきて、暖房に使っていただるまストーブで素焼きの小さな手捻りを作ったりしていた。

大山崎山荘美術館の展示風景
大山崎山荘美術館展示風景 Photo by Fumihito Katamura
大山崎山荘美術館の展示風景
大山崎山荘美術館展示風景 Photo by Fumihito Katamura

木林文庫にいらっしゃる方で、たまにクートラス展を松濤で観ましたとか、大山崎で観ましたという方がいる。大山崎で観たという方がいるとびっくりしてしまいます。初めて観る方には全集をお見せしたりしています。

木林文庫チャンネル「一夜に一枚、靴箱に描き続けた画家「ロベール・クートラス」」

ルブリョフのイコンを見ていて思うのですが、うちで出したクートラスの絵にも宗教的なところがあります。あの色使い、あの瑠璃の青。イコンの瑠璃色はラピスラズリで出していて、すごく貴重だったようです。

ベルナール・ビュフェ美術館「ロベール・クートラス 僕は小さな黄金の手を探す」
Bernard Buffet Museum Photo by Fumihito Katamura
ベルナール・ビュフェ美術館の展示風景
Bernard Buffet Museum Photo by Fumihito Katamura

木林文庫チャンネル「長男をおんぶしながら続けた仕事」

パリのギャラリーでのクートラス展を主催していたのがステファンさんというギャラリストで、話す機会がありました。作品集はもともとそのギャラリーに送ってありましたが、ちょうどその時にタイムリーだとは思っていなくて。

サンジェルマンのカフェでステファンと話した時に、皆川さんの作品——デッサンかな——とクートラスは似ているんだよね、親和性があるんだよねという話をされました。デッサンのラインそのものではなくて、もっと内にある、描くことの動機みたいなものが何か共通している気がする、と。内面に踏み込んだようなおっしゃり方をしていて、初めてそういうことを聞いたのでびっくりしました。

メゾン・ルイ・カレ。アアルトの設計による天井と窓
スピーチのあと、芝生で

そのギャラリーに行った時、作品集が目の前で売れてね。重いから送りましょうかと言っていたらしいのですが、いやいや持ち帰ると言って紙袋に入れて。かなりがっちりした方ではあったけれど。あれは嬉しかったね。やはり目の前で売れるというのは。

ステファンが他の展示でもクートラスをやっているよと言って、一点だけね。でも提供はステファンのところで、クートラスの「日本の友達が出版をした」と書いてある。Amis japonais と書いてある。友達という言い方だよね。

メゾン・ルイ・カレの室内。大きな窓から光が入る
建物の前に集まる人々
会場で皆川明さんと話す館長と副館長

もうしばらくしたら皆川さんの作品の展示が、パリ郊外のアルヴァ・アアルトの家——メゾン・ルイ・カレであるというのを聞いて、一緒に行きましょうと言ってくださって。フランスでは唯一のアアルトの建物らしいのですが、そこも観られました。九月でとてもいい時期で、天候も快晴で素晴らしくて。

皆でシャンパンで乾杯して、皆川さんのスピーチがあったのですが、妻が「飲むのはやめなさい」と言っていたのに、いやいや一杯くらいと言って乾杯してしまって。すぐ回ってね、僕だけ横になってしまった。立っていられなくて。かなり恥ずかしい状態で、申し訳なかったです。

芝生でのスピーチ。白い衣服が皆川明さん
メゾン・ルイ・カレ。皆川明さんの展示に集まった人々

翌日はパリコレもやっていますよと言われて。ボージュ広場の近くに宿を取っていて、僕らはもともとマレ地区に住んでいたので、そのすぐ近くでパリコレのための展示をしていると聞いて観に行くことができました。窓の向こうに緑がある場所で、とても素敵な展覧会でした。例によって汚い格好で入ってしまったけれど。

東京都現代美術館で大きな「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展がありました。最後のタイトルが平仮名で「つづく」なんです。これまで作ってきて、これからも作品を作っていきますという意思表示ですね。僕らはたまたま一月一日か二日に観に行きました。

メゾン・ルイ・カレの室内。黄色いタイルの床に椅子が置かれている

ファッションで作られたものを展示するというのは、とても難しくて不思議なことなんだと思いますが、一つの部屋に彼の作ったものが上からも吊るされているし、壁際にもある。面白い展覧会でした。mina perhonen はフィンランド語ですから、フィンランドを中心にした北欧で巡回して、スウェーデンは国立美術館だった。その最後が東京だったのかな。

こういうのって偶然のようでも、きっと偶然じゃないんだよね。繋がっていくんだよね。

木林文庫チャンネル「パリで出会った二つの美しい展覧会」

この本は、木林文庫が営む出版社エクリの刊行物です

¥33,000オンラインストアは品切れ

この本と結びついている本

僕の夜ロベール・クートラス

最初に出したカルトの作品集

僕のご先祖さまロベール・クートラス

グワッシュを集めた作品集

Coutelas Journal

この全集の前に作られた冊子

アンドレイ・ルブリョフМ. アルパートフ

イコンの瑠璃色を見て、館長は「うちで出したクートラスの絵にも宗教的なところがある」と話している