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青い花だとそのままのタイトルで、ノヴァーリスの『青い花』があります。あれは幻の花なのですが、ノヴァーリスの文章のほうが、埴谷雄高に比べたらずっと分かりやすい。
これは加藤登紀子さんが訳しています。さきほどの「百万本のバラ」とは別ですが、加藤さんが作曲もしているようです。エリック・バテュはフランス生まれですが、もとは違う国の方のようですね。
単語では、なぜか「断崖」という言葉が好きです。エルンスト・ユンガーはドイツの作家で、ドイツ軍がパリを占領していたときの司令官だった人ですが、特に裁判にかけられずに済みました。その彼の『大理石の断崖の上で』は不思議な小説で、このタイトルを知ったとき、すぐに求めた一冊です。
ドルイドについては実はあまりよく分かっていないのですが、以前観た映画に『第九軍団の鷲』がありました。原作は少年少女向けの歴史小説を書いているローズマリー・サトクリフです。ローマ軍の五千人ほどの軍団が姿を消してしまうという史実があって、歴史書にも残っているけれど、どこへ行ったか見つからない。サトクリフはこれに物語を付けて、消えた軍団の軍団長だった息子が父の行方を探しに行く設定にしています。
ロス・マクドナルドを読むようになったのは、シナリオ学校の時の田村孟さんがきっかけです。私のシナリオを読んで、フォークナーを読めと言われました。
石牟礼道子さんというと水俣が印象的で、『苦海浄土』の恐ろしい記述が頭に浮かびます。これは彼女がまだ四、五歳の幼女だった頃のことを書いたもので、記憶力がよく、耳もよかったのでしょう、おばさんたちの話を聞いて覚えていたことを書き起こしている。それがすごく美しい。
写真家の上田義彦さんが、同名の映画『椿の庭』を撮っていて、その気に入った場面をスチール写真にした写真集です。葉山の、海の見える古い木造家屋に住む女性の話で、まもなくその家を手放すという直前の物語。映画は観ていないのですが、この写真集を見て、観たら素晴らしかっただろうなと思いました。
梨木香歩さんは不思議なタイトルを付ける方です。カバーの絵も古代の海幸彦・山幸彦を使っていて、登場人物の名前もそう。いかにも古事記っぽいタイトルなのですが、場所は大和のあたりかと思ったらそうでもなく、シュロの木が生えているような土地を訪ねていく。
藤原定家の『明月記』そのものをきっちり読んだわけではなく、堀田善衞が明月記について書いたこの本で知りました。その第一行が、漢文のような書き出しです。——世上乱逆追討耳ニ満ツト雖モ之ヲ注セズ、紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ。
トランプの女王が出てきて、赤薔薇と白薔薇の話があるでしょう。一生懸命に白い薔薇を赤く塗っているところ。「ちょっと伺いますが」とアリスはおずおずと言いました。「どうしてこの薔薇にペンキを塗っているんですか」。5と7は黙って2を見ました——この5と7とか2というのはトランプですね。
ドイツの森というとゲーテの『魔王』です。森の中を行く話で、シューベルトが曲をつけている。子どもが病気になって、父親が早く町の医者に見せようと馬で走る。魔王が子どもを攫おうといろんな幻影を見せて自分の方へ取り込もうとする。父親は「あれは幻だ、木の枝だ」と言いながら必死に走るけれど、町に着いた時にはもう死んでいて、魔王に連れて行かれたという。歌を聴いても怖いし、話を聞いても怖い。あれも森の悪魔の一つの話です。
「椿の木の下で」という一編があるので、椿の本に入れました。猫が主人公で、絵としては猫耳をつけた小さな女の子ですが、物語は猫の話です。可愛がられている小さな猫のところへ、主人が捨て猫を拾ってくる。その子がちゃっかりしていて、飼い主が来るとへたっとして「私だめ」という姿を見せ、いないときにはチビにちょっかいを出して虐める。訴えると「あんた嫉妬してるんでしょ」と言われてしまう。巧い描き方です。
金子光晴が『老薔薇園』というのを書いています。金子光晴はなかなかしたたかな人ですから、老薔薇園というくらいで、何千本もあるような薔薇園を歩くのですが、萎れたのが多くて、その中を歩く。美しく咲き誇った薔薇よりもそちらに目が行っている、というような詩です。
文学というと、タイトルからすると最初に浮かぶのは『薔薇の名前』でしょう。でもこれは薔薇そのものの話ではない。何で薔薇なんだっけ、すごく面白かったのに内容を忘れてしまった——僕もそうなんです。この分厚い二巻本を二人とも一気に読んでいるのに。