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ドングリの絵本で同じように楽しいのが『エミリーときんのどんぐり』で、これは夢物語です。女の子が眠っていると、窓の外にドングリ船が現れる。帆はオークの葉っぱ。ドングリ船でいろんな冒険をして、大嵐もあって無事に帰ってきましたという話です。
ドングリの木——オークの木を植えるという話なのですが、誰かが植えたところに農薬を蒔いてしまって、せっかく植えたのに枯れてしまう。環境問題も含めて、絵本としては珍しい、ある意味で告発の意味がある本です。
スウェーデンの作家、エルサ・ベスコフが『どんぐりぼうやのぼうけん』という可愛らしい絵本を描いています。どんぐり坊やですから、みんな可愛らしい帽子をかぶっていて、お母さんはオークの葉っぱがエプロンなんです。子どもたちもみんなこの帽子。絵がすごく可愛い。
オノ・ヨーコが『どんぐり』という本を書いています。タイトルもドングリだし表紙もドングリなのですが、読んでみてもドングリの話は一個もない。エッセイです。
『木を植えた男』という話がありますが、何の木を植えているかなど考えたこともなくて、読み直してみたらドングリなんですね。
「かつて座亜謙什と名乗った人」たる宮沢賢治は、「謙什」の名を冠した童話『虔十公園林』で木を植えた男を書いた。賢治が造形したのは「でくの坊」と呼ばれ笑われ「誉められもせず」の男、すなわち理想の人の姿である。
木林文庫で一番多いのは林檎の本ですが、二番目がどんぐり関係です。確かに多い。その中でも多いのが宮沢賢治の『どんぐりと山猫』で、六冊あるのかな。
ドングリの本はほとんど絵本ですが、いくつか学術的に論じた本があります。その中では宮脇昭先生です。
ドングリの本はほとんど絵本ですが、いくつか学術的にドングリを論じた本があります。その一つが『ドングリと文明』で、ドングリ全般について書いた本です。
「残りの360日が桜にとってはたいせつなんです」と。『桜守のはなし』(佐野藤右衛門著)の穏やかな語り口に導かれて頁を繰ると、桜の見回りに同行している気持ちになる。小学生から花見酒好きまで幅広い年代に開かれた本で、5日間しか見ない桜のことがよくわかる。
薔薇はかなり古くから世界中の人に愛されていて、同じような表現が『ルバイヤート』——ペルシャの詩人ウマル・ハイヤームの文章を集めたもの——の中にあります。朝日に浮かぶ薔薇の蕾、薔薇の綻び、という表現です。もうすぐ咲くという状態が美しいというのは、古今東西みんな思うんだな、と。十一世紀頃のペルシャと言われています。
文学というと、タイトルからすると最初に浮かぶのは『薔薇の名前』でしょう。でもこれは薔薇そのものの話ではない。何で薔薇なんだっけ、すごく面白かったのに内容を忘れてしまった——僕もそうなんです。この分厚い二巻本を二人とも一気に読んでいるのに。
薔薇は古くから世界中で愛されてきました。ドイツのヒルデスハイムには「千年の薔薇」と言われる、カテドラルに咲いている薔薇があるそうです。千年の薔薇というとちょうど十一世紀くらい、その頃から現代まで咲いているはずなんですね。
一輪の薔薇というと最初に浮かぶのが『星の王子さま』です。最初に星にいる時、薔薇が一輪だけあって、ものすごくわがまま。「私は世界に一本よ」と言って、風邪をひくから風が吹いた時は囲ってとか、注文ばかり多い。わがままな女性の象徴のような薔薇で、それでも一生懸命お水をあげるんですね。
ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』と『春(プリマヴェーラ)』。春ですから絵の中にも花がいっぱい溢れていて、着ている服の絹にも花が描いてある。当時フィレンツェにあった植物が百種類以上、全体で描かれているそうです。
クレーにも薔薇の絵があります。クレーらしい描き方で、タイトルは『バラの庭』、ドイツ語で Rosengarten。基調が少し明るい煉瓦色で、薔薇がたくさん咲いているというシンプルな絵です。全部が赤ですが、ちょっと花弁の感じも描かれていて、良い絵ですね。かなり大々的な展覧会のカタログで、特に作品が多かった時のものだと思います。
シャガールはブーケがすごく多くて、いろんな花を花瓶に入れている絵が多いでしょう。タイトルに薔薇と付いたものが何点かあるのですが、うちにある画集の中には薔薇と付いたタイトルはない。これは薔薇だろうな、というのが『恋人たち』です。BIRTHDAY、お誕生日に恋人に花を贈っているから、多分薔薇ではないかと考えています。
エリアーデの『19本の薔薇』も意味深長です。エーコと同じで、エリアーデもルーマニアの宗教学者。執筆を主にしていたのはチャウシェスクが独裁をふるっていた時期で、最後にはフランスに亡命します。その政治的な背景がすごく含まれていて、『19本の薔薇』というのも象徴的です。
リルケには薔薇の詩集もありますが、有名なのは自分の墓碑に薔薇の言葉を入れてくれと頼んだという話です。墓碑だから短い。「薔薇よ おお、純粋な矛盾 夥しいまぶたの奥で 誰の眠りでもないという喜び」。純粋な矛盾、というのが不思議です。
ルイス・キャロルはオックスフォードの数学科で、当時トップ首席だったそうです。そのままクライストチャーチの数学講師になっている。学長のリデル家に三姉妹がいて、ボート遊びをしたときに自分で作った物語を聞かせた。それが『不思議の国のアリス』の元になった話で、主人公にアリスという名前をつけたら、次女のアリスがとても喜んだ。それで手書きの本を送ったと言われています。
薔薇を書いた人の中で、すごく意外だったのがジョージ・オーウェルです。『1984』や『カタロニア讃歌』——スペイン内戦の話ですから、ものすごくラディカルな人でしょう。ラディカルな人が薔薇を育てないわけではないけれど、『オーウェルの薔薇』という本が最近出て、そのタイトルを見た時にすごく意外でした。オーウェルの薔薇? と。レベッカ・ソルニットという人で、これが面白かった。
本としてはタイトルから『リュシェンヌに薔薇を』。書いたのはローラン・トポール、フランス語で書く作家で、出自はポーランドでしょうか。一時すごく評判になって、どういう話か分からなくて読みました。フランス語で書いてあるのに、このタイトルだけ英語になっているんです。
若冲の薔薇が素晴らしい。『薔薇小禽図』、薔薇と——雀ではないと思いますが、なんとなくシジュウカラっぽい鳥。この絵に限らず、若冲の作品を大々的にたくさん観たのはこれが初めてでした。江戸期の絵は、花もどこか幻想的なものになりますね。
金子光晴が『老薔薇園』というのを書いています。金子光晴はなかなかしたたかな人ですから、老薔薇園というくらいで、何千本もあるような薔薇園を歩くのですが、萎れたのが多くて、その中を歩く。美しく咲き誇った薔薇よりもそちらに目が行っている、というような詩です。